2020/9/15 – 2020/9/16
Private area (seclusion)
Artist:
Aiko TSUTSUI
Ryusei MIYAZAKI
Installation view▼
Microcosmos of “semi-” closed room
Practice of ‘not’ lonely
photo by Aiko TSUTSUI
Work:
Microcosmos of “semi-” closed room/Sound and Poetry installation
Practice of ‘not’ lonely/Sound and Text performance
concept
両作家の自宅を会場として二つの作品を上演した。二つの作品は共に両作家の協働によって制作された。
宮崎竜成の自宅会場で行われた「(半)密室のミクロコスモス」は、歌人である筒井愛子が書いた文をあちこちにプロジェクションし、宮崎竜成が制作した環境音のコラージュ音源が微かに響く空間を作り上げた。自宅を会場とすることで会場内では生活のあとが散見される。 しかし、鑑賞者はその生活者のことを知り得ないため、他者の個人的生活空間に侵入したという感覚のみがダイレクトに感じられる。会場内は個人的な空間の中に閉じ込められたような閉塞感があると同時に、外から聞こえてくる環境音によって外の世界の気配が緩やかに侵入するが、人工的に制作された環境音のコラージュも空間に影響する。よって、外から聞こえてくる環境音が宙吊りになってしまう。このように閉じた空間(内)と開かれた環境(外)が同時に知覚される状況を(半)密室と定義した。プロジェクションされた文章は、言葉と しての意味や記号が先行するのではなく、物質的でもありながら現象的でもあるものとして立ち現れ、閉じられた空間と開かれた空間がせめぎ合う会場に影響されながら知覚されるイメージが変化する。
筒井愛子の自宅会場で行われた「(不)孤独のプラクティス」は、筒井愛子が別会場でリアルタイムに書き続ける散文を会場にいる宮崎竜成がその都度印刷し、その文章を読みながら 会場にあるものとアナログシンセサイザーで演奏をするというパフォーマンス作品である。書かれた文章を朗読する際、文章は書かれた時点での主体から切り離され、演者が新たな主 体となる。そこにはどうあがいても齟齬が発生するが、その齟齬を引き受けていくということは、主体が定まりきらないことを引き受けることでもある。文章を自分のものとして中心 化しようとするが、同時にそれが阻まれてしまう。こうした衝突の繰り返しが、ある種のぎこちなさを伴って演奏に反映される。この繰り返しによって、テキストを書く側も、朗読し 演奏する側も、テキストを独立した対象として切断し、文章自体に憑依していく。テキストを書く身体、朗読、演奏する身体、テキスト自体の身体が相互に協働し、齟齬をはらみながらズレ続ける。その態度を見せること。
statement
Act.1
ううん、あれは流れ星じゃなくて新幹線。明るいものが全部星じゃなくてごめんね。そのかわりにあんたが名前を付けていいよ。日々はあわい。そこに届く光は幽体だとして、ニューロンは、トラックは運び続けている。
その言葉は誰のものか、その音は誰のものか。棒立ちのまま深淵は覗けるか。閉じ込められているような、とても深くて、でも外の声は聞こえる。生まれたならば光か。ドローンが飛んだのをここから眺めていた。わからないまま浮遊するそれらに触れるとき、それはとても広く、かつとてもちっぽけな、ただ佇むものとして、出会う。
窓のふちに差し掛かったところで見えなくなって、その先のことは知らない。「何?ヘリ?」「いや、ドローン」そんなふうにカットを区切り続けて、私たちは定形を結ぶ。行方は知らない。知らないことだけはわかる。そんなものの意味に、名前を付けてしまう(名前をつけられるだろうか)。観測可能な範囲で日々を呼んでみる。
Act.2
あー、あー、サウンドオンリー。聞こえますか。言葉は覚えても覚えても刷新されていって、耳を済ませるだけで精一杯だった。わたしはあなたか、あなたはわたしか、その音はわたしが鳴らすのか、その言葉はあなたが紡ぐのか。テレビが4Kを映せるようになっても一人じゃないって言い張れない。一秒間で何ビットの情報が送られても、やっぱりこの距離がある限り、解像度は限りなく低いんだと思う。
星座を紡げた時代に生まれたなら幸せだと思う?座標は何回だって勝手に繋げていいはずなのに、あ、あれはこぐま座。それを知った上で名前を取り払おうとするとき、何よりも孤独な気がする。わたしたちは身体で翻訳する。それはずれ続け、やがて失調していく。あなたのことはわからない、隔離される身体。でもどうしようもなく、ずれを伴って、わたしたちは介入する。声に出すほかないんだよな。サウンドオンリー、こちらは今日も星座を繋げて暮らしています。わたしが一つの身体を見失う時、奏でられるそれらは。